頚椎ヘルニアで皆さん苦労されるのが「就寝」。どの格好にしてもしっくり来なくて寝れない厄介なケガです。症状の重さにもよりますが、急性期から3ヶ月ほどまでは仰向けでの睡眠が中心です。ここで問題となるのが枕のセッティングで、これを間違えてしまうとどう頑張っても辛くて眠れません。
寝方と枕
ヘルニアを持病に持つ患者さんによってそれぞれ最適な枕の高さ、硬さ、形、位置が異なるのですが、神経の圧迫を回避しやすい基本の方法があります。そのために必要となるのが「首元にサポートのある枕」、「バスタオル」、「頚椎カラー」の3つです。これらをどのように使うかというと、このように使います。
【左】柔らかい枕ならもう少し肩に近づけるとgood。
【右】後頭部側はぼんのくぼまで、あご側は胸寄りに。
この写真では首元にサポートがある枕の替わりに治療専用の上下非対称枕を使用していますが、この3つのアイテムが生み出す首の角度や密着感、さらには若干の牽引力が頚椎の動揺を抑制し、また不用意な寝返りによる早朝の不快感を軽減してくれます。
まず、頚椎カラーは日中の使用時よりも余分に指一本入るように緩く装着し、カラーの後頭部側が無理のない範囲で首の中でも頭寄り(できればぼんのくぼまで)に接するようにして下さい。そうすると夜間の気道と外頸動脈の閉塞を防げ、快適に眠れます。
次に枕の高さですが、枕の下にバスタオルを敷いて軽く頭が持ち上げられる高さにし、さらに枕の淵が両肩にしっかりと触れるようにしましょう。すると後頚部に伸ばされる力が加わり、神経根の圧迫(背中、上肢における神経痛の原因)を軽減します。
通常「頭が持ち上がる=首を曲げる」ことになるので頚椎前側の圧迫力により椎間板(正確には髄核)が後ろ側に集まって良くないとされますが、頚椎カラーが下顎骨を持ち上げてくれるのであごが支点となり、むしろ頚椎に若干のけん引力を生み出せます(※この時、カラーがあごではなく喉に当たって首が締まる感覚がある場合はカラーがきつすぎます!)。
椎間板ヘルニアは、飛び出した椎間板(髄核)が神経を圧迫して症状を出すのですが、これらの突出物により通りが悪くなった神経を、凝り固まった首や肩の筋肉が圧迫することでも症状を悪化させてしまいます。私たち治療家は筋肉を緩めたり、姿勢が神経に負担をかけない最適な状態になるよう調整して痛みやしびれを取りますが、治療を受けずに症状を軽快させたい場合は寝方への真剣な取り組みをお勧めします。
横向きへの挑戦
そして、3ヶ月を過ぎた頃から横向きでも寝れるような気がしてくるかと思います。そんな時は一度、お休みの日のお昼寝(※頚椎ヘルニアは一日に何度か寝転がって首を休めたくなる)として10分ほど挑戦してみましょう。
ただし、横向きにも注意点があります。まずは、ヘルニアがある側(痛い方)を下にした横向きから挑戦します。もしも横になった瞬間に腕や肩が圧迫されて不快感が出る時は、時期尚早。現状では横向きで眠れないので、もう少し期間を置いてから挑戦してください。
・首が背骨に対して左へ5°程度傾くように枕をセットする
・横向きが不慣れな時期は、頚椎カラーを併用すると安心
さて、なぜヘルニア側が下の横向きから挑戦するのかについて少し説明をしておきます。首や肩、腰やお尻の一般的な傷病は、痛い方を上側にして患部を下敷きにしないように寝るのですが、頚椎ヘルニアは何といっても飛び出した椎間板によって神経根の圧迫を防ぐのが肝心です。
したがって、痛い方を下にして枕の高さを調節し、横から見たときに背骨の延長線上よりも5°程度、頭を高くします。仰向けの時と同様に、枕の淵は肩にしっかり触れるようにしましょう。
ヘルニア側を上にした横向き姿勢でも一見、神経根の圧迫を防げるように見えますが、どの角度に調節しても頭とヘルニア側の肩をつなぐ首は枕側に沈み込むため、ヘルニア側に軸圧がかかり眠れない状態となります。
頭には写真向かって左にすべる力、肩にはその場に留まろうとする力が働く。すると、反対のヘルニア側には微細な圧力がかかり30分もするとこの体勢ではいれなくなる。
今回は頚椎ヘルニアの寝方についてお話させていただきました。最後までお読みいただきましてありがとうございました。