頚椎ヘルニアのリハビリ

リハビリ編(ストレッチ,運動,トレーニング)


頚部のリハビリテーション



  最終回では、頚椎椎間板ヘルニアの「リハビリ」についてまとめます。

  リハビリは、あらゆる意味での社会復帰を意味する言葉で、痛み・しびれを回避する短期的なものや、根本的に症状自体を出にくくする長期的な取り組みなど、多岐に渡る要素があります。


  前半でストレッチ軽い運動などの「治療」的側面、そして後半でトレーニングを中心とした「強化」的側面に別け、安全で効果的なリハビリを紹介するわけですが、その中で絶対に忘れてはならないのは【首に過剰な負担をかけない】という点です。


  たくさんの機能解剖学的な方法論を学ぶと、わらをもすがる思いで挑戦したくなります。しかし、もちろん体は万全な状態ではなく、首にはわずかな許容量しかありません。そこへ現状では耐えられない負荷がかかると、痛み・しびれが簡単に再発してしまいます。

  特に、首周辺へのアプローチが主となるリハビリに関しては、再発防止のためにも物足りない程度の内容で留めておきましょう。




トレッチと運動

  頚椎ヘルニア患者の皆様は、首をストレッチして少しでも楽になりたいと思います。しかし、急性期(受傷~2週間ほど)は絶対安静ですし、首を捻るのが怖いにも関わらず、首を大きく動かす運動は危険です。

  したがって、リハビリの初期段階は「首自体のストレッチ」と「首以外のストレッチと運動」の2者をバランスよく取り組むのが重要な再発防止策になります。


首のリハビリ割合




受傷後|2週間 ~ 3,4ヶ月

※ 個人差大

初期のストレッチ

  急性期を過ぎた頃から徐々に始めるストレッチです。

  まずは頚椎カラーを装着した状態で仰向けになります。枕のセッティング方法は「寝方編(☞頚椎ヘルニアの実際①)」を参考にしてください。


左右へ振る

  首を左右へ交互に、そして小刻みに動かします(40°以内)。この時点での目的は首の可動域拡大ではなく「筋肉のリラックス」。ゆっくりとした速さから始め、違和感がないのを確認してリズムよく動かしましょう(それでも振り幅は左右40°まで)。


  寝ながら行うと、体重の1/10ある頭の重さを首に伝えずに済むので、再発防止にとても有効です。また、頚椎カラーは捻る角度を抑制して、安全第一である初期のリハビリ遂行を助けてくれます。




その他のストレッチ


  カラダの専門職以外の皆様が見落としやすい「患部以外のリハビリ」。首は、接地している足から遠い関節ですので、頚椎の働きを他の関節で補いやすいです。

  特に、股関節の柔軟性は首のストレスを激減させてくれます

 

予防と過ごし方編(☞頚椎ヘルニアの実際②)」でご紹介したように日常生活では捻りとかがみ運動が多いので、お尻とももの裏側を重点的にストレッチします



もも裏を伸ばす

もも裏の手順①

  手に持ったタオルをストレッチ側の足へ引っ掛け、膝を曲げたまま胸へ寄せます。


もも裏の手順②

  次に、無理のない範囲で膝を伸ばします。成人で完全に膝が伸ばせるのは少数ですから無理をせずにもも裏を伸張しましょう。


  20~30秒のストレッチを左右2回ずつ行えば十分です。お風呂上りなど、体が芯まで温まった状態で取り組むのがコツです。

  初期のリハビリとして実施する場合は、安全のために枕をするのがおすすめです。



お尻を伸ばす

お尻の手順①

  まずはストレッチ側の足を写真のように組みます。


お尻の手順②

硬い方は、組んだ足のみを頭方向へ引き上げます。


お尻の手順②'

柔らかい方は、支えている足のもも裏を持って両脚を一緒に引き上げましょう。




受傷後|3,4ヶ月~

※ 個人差大

チン・イン


  首の筋肉を伸ばすリハビリの前に必ず習得しておかなければならない基本姿勢「チン・イン」と「脊柱の直立」。“チン”は顎を指しますので、あごが前に突出しないように引いておくイメージが近いでしょうか。また、背骨を真っすぐにするとチン・インの安全性を高められます。

  この姿勢は下を向く運動と似ているので初めは難しいかもしれません。目線を正面に残した状態で顎を引くのがコツです。



まっすぐ前へ

前方向

  首の真後ろをストレッチする方法です。

  先ほど説明した基本の姿勢を作ります。顎の位置を保持したまま、頭頂部を前方向に移動させます。慣れない時期は頚椎カラーの装着や、目線を正面に残すことで再発防止になりますが、徐々に補助具なしでのリハビリにも慣れていきましょう(違和感や不安感がある場合は別)。


  優しく動かし、5秒程度伸ばしたら首を元の位置へ戻します。首をストレッチするのが不安ならトップ写真のように頚椎カラーを装着したり、手で頭を支えてあげると安心して動かせます。



斜め前へ

斜め方向

  次に首の斜め後ろを伸ばします。

  少しの曲げ角度でも伸ばされている感覚が出やすいのが「斜め」の特徴です。ヘルニアと逆側はスムーズに動かせる場合が多いですが、ヘルニア側は神経の圧迫によって「詰まる」感覚が出やすいです。その際は、無理せず少し手前で動きを止めて狭窄部の負担とならないようにします。



  慣れてきたら横方向も開始します。

  捻り(回旋)や上を向く動き(後屈)は行わないのが鉄則。例えストレッチであってもこれらの運動を首のみで行うのは、神経の通り道が狭くなっている頚椎椎間板ヘルニアにとって危険です。


後ろは危険

  危ない動作は「股関節」と「脊椎(胸郭含む)」の連動によってわずかだけ動かすようにし、傷ついた神経の回復を促しましょう


  神経の修復スピードは非常に遅く、繰り返し負担をかけると「治癒スピード<損傷スピード」となり、いつまでも辛いままです。




再発予防レーニング

受傷後|3,4ヶ月~

※ 個人差大


  背すじを真っすぐ保つために必要な筋肉をトレーニングします。頚椎椎間板ヘルニアの症状が悪化するタイミングは、直立時よりも圧倒的に不安定な姿勢(起き上がり、物を拾うなど)が多いです。どんな状況においても上体から頭にかけての位置関係を保つリハビリが大切なのです。

また、長時間にわたって首へ負担がかからない姿勢を維持する体幹の筋肉を鍛えるには軸を保つためのトレーニングは必須で、簡単な日常生活動作で悪化しやすい人、そうでない人は基礎体力の部分に差があります。



お腹を強化する

プローン

  起き上がり動作と大きく関係するトレーニング「プランク」。膝立ち、もしくはつま先立ちのいずれかで10~30秒の間、静止します。体力や運動能力、性別などによって体勢や保持時間は異なりますが疲労でチン・インが保てなくなったり、首などに違和感が出た時点で中止します。


ドッグバード

「ドッグバード」というトレーニング。四つ這い状態から左右異なる手足を水平に伸ばすダイナミックなリハビリなので、症状が落ち着きつつある方向け。ポイントは、手足を伸ばすタイミングで頭を上げないこと。


応用編

  動きに慣れてきてたら、胸郭(肋骨に囲まれた部分)と背骨の連動を用いてチン・イン姿勢のまま前方の目視もできます。難易度が高いので無理は禁物



横側を強化する

ラテラル

  カラダの側面を鍛える「ラテラル」。要領はプランクと同じで、運動未経験者もチャレンジしやすいのが特徴。座ったまま物を拾い上げたり、車の乗り降りの基礎となるリハビリです。大きな鏡があれば首が曲がっていないか確認しながら実施できます。無ければ頚椎カラーを使用すると真っすぐの感覚を養えます



背中を強化する

スクワット

  頚椎ヘルニアを患っていない方でも、ほとんどの人が正しくできない「スクワット運動」。パソコン仕事などの姿勢保持やかがみ動作に応用が可能なトレーニングです。


  写真のように両腕を組み、腕が下がらないように意識しながら腰を落とします。重心が低くなった場合でも、上半身を安定させ続ける訓練です。




  ここまでご覧いただいた皆様は感じたかと思いますが、頚椎ヘルニアのリハビリは、決してラガーマンやプロレスラーたちが傷害予防に行なうような頭に重りを付けた状態で首を動かすものではありません。

  関節の柔軟性や体幹の安定性を高めるなかで正しい首の角度を保ち、その過程で頭を支える筋力を総合的に向上させるのです。


  最後に大前提として、手術を受けなければならないような重症の皆様はしっかりと医師や看護師、理学療法士の指導のもと、けん引療法や等尺性運動(頭の位置を変えずに力を入れるリハビリ)などの一般的な術後プロトコルに沿ったリハビリ計画のもと、社会復帰をするべきだということをお伝えしておきます

  しかしながら、症状の強さや置かれている社会環境によって医学的支援が受けられない方も相当数いらっしゃると思います。これらのコラムが、そういった頚椎ヘルニアの方のお力になりますと幸いです。






Akio Fujitani
パーソナルトレーナー


Akio Fujitani


≪ 保有資格・免許 ≫

  • 日本スポーツ協会[旧:日体協]公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT)
  • NSCA認定パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
  • ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(NSCA-CSCS)
  • 健康運動指導士 /元 健康運動実践指導者(~2016)
  • 鍼灸師※ /あん摩マッサージ指圧師※ /柔道整復師※

※ 国家資格



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